ロボットや自動運転車向けの人工知能では、視覚と言語、あるいは行動を結び付けるモデルから、行動そのものをモデル化しようとするアーキテクチャへの転換が進んでいる。この潮流は「大規模行動モデル」(Large Behavior Model)、またはLBMと呼ばれ、MONOistは自動運転システムやロボットの開発における重要な軸になる可能性がある概念とみている。
LBMは、既存モデルに限定的な能力を追加するものではなく、変化する物理環境の中でシステムがどのように行動を学習するかを見直すものである。テキストや画像の分析、コードの生成だけにとどまらず、動作や現実世界との相互作用に直接結び付いた行動の生成を目指す。
エンドツーエンドモデルから行動モデリングへ
自動運転研究では長らく「エンドツーエンド」(End-to-End)アプローチが採用されてきた。この方式では、ニューラルネットワークがカメラやLiDARなどのセンサーのデータを受け取り、それを分析、計画、制御の各段階に通して、車両を走行または誘導する出力を生成する。
このアプローチは、システムがデータから一体的に学習できる能力を与える一方で、判断の解釈や、まれな状況・変化する状況への対応に課題を抱えている。記事によると、LBMは、将来の状態の予測、環境の変化の理解、さまざまな状況における最適な行動の選択を含む、より広範な表現を学習することで、この隔たりに対処しようとしている。
このアプローチは、大規模言語モデル(LLM)や画像生成モデルなど、既知の生成AIモデルとは異なる。また、GitHub CopilotやClaude Codeのようなプログラミングに用いられるAIモデルとも異なる。LBMにおける基本的な出力は、テキストでも画像でもコードでもなく、物理世界で実行可能な行動である。
ロボット研究における概念の始まり
記事は、Toyota Research Institute(TRI)がロボット分野でこの概念を体系的に提示した初期の機関の一つだったと指摘している。2025年、TRIはBoston Dynamicsとの共同研究を発表し、「Pretrained Large Behavior Models Accelerate Robot Learning」と題した研究論文を発表した。
MONOistは、マサチューセッツ工科大学のRuss TedrakeがLBMをロボットの行動に関する包括的なモデルと表現し、「視覚・言語・行動」モデル、すなわちVLAを含み得る一般的な概念とみなしていると伝えた。これは、LBMが必ずしも従来モデルを排除するのではなく、それらを包含し、理解を行動へ変換することに重点を置く、より広い枠組みとして機能し得ることを示している。
XPengがこの概念を車両へ展開
別の応用例は中国のXPengに見られる。同社は自動車からロボットや自動運転へと事業を拡大している。同社は2024年に、認識と車両の直接制御を結び付けるVLAモデルを発表していたが、VLAモデルだけではあらゆる自動運転条件に対応する柔軟性が十分ではないと結論付けた。
2026年4月24日、XPengはAuto China 2026で、VLA 2.0自動運転システムの量産開始を発表し、LBMを自動運転システムに導入したことを反映していると説明した。その後、同社は2026年6月3日、CVPR 2026で、VLA 2.0と「世界モデル」(World Model)の開発・利用に関する研究を発表した。記事によると、世界モデルはLBMアーキテクチャの構成要素の一つである。
世界モデルは環境をシミュレーションし、環境がどのように変化するかを理解するために用いられる。これによりシステムは、実行前に行動の起こり得る結果を評価できる。LBMの理論では、この能力が、単一のセンサー信号や状況に直接反応するのではなく、最も適切な行動を選択するのに役立つ。
なぜこのニュースが重要なのか
ここでの実際の変化は、独立した製品の発売というより、ロボットや自動運転システムのアーキテクチャを考える層の移行である。LBMが成功すれば、制御システムは状況ごとに分離されたルールへの依存を減らし、学習した内容を新たな状況へ一般化する能力を高める可能性がある。
しかし記事は、LBMが成熟した標準になったことや、VLAモデルまたはエンドツーエンドモデルを実際に上回ったことを証明してはいない。この概念は依然として研究プログラムや初期の応用と結び付いており、物理世界で安全かつ解釈可能な行動を実行するには、テキストや画像だけを生成するモデルには見られない要件が課される。そのため、未解決の問題は、こうしたモデルが自らの判断を検証し、予期しない状況に対応し、広範な商用利用に十分な信頼性を実現できるかどうかに関係している。
Toyota Research InstituteとXPengの参画は、競争がモデルの規模だけをめぐるものではなく、行動データ、世界のシミュレーション、モデルと実際の制御システムとの接続をめぐるものでもあることを示している。このためLBMは、ロボットや自動運転車において注目に値する潮流だが、現時点で問題に対する最終的な解決策とみなすべきではない。