Microsoft Threat Intelligenceは、サイバー攻撃の手法における質的な変化を明らかにしました。攻撃者は、攻撃チェーン全体を自動化するために、エージェンティックAI(Agentic AI)に基づいたフレームワークを使用し始めています。具体的には、攻撃用フレームワークであるARTEXを使用して、GitHubの公開リポジトリからAPIキーやOAuthアプリケーションの認証情報などの漏洩した「シークレット(Secrets)」を検索し、それらを使用して組織に侵入してクラウドリソースにアクセスする動きが確認されています。
検索からわずか数分での侵害へ
これらのツールの危険性は、攻撃者が直面していた従来の障害、すなわちコードのレビューや漏洩データの分析に必要だった時間と人的労力を回避できる能力にあります。従来の攻撃は継続的な人的介入に依存していましたが、エージェンティックAIツールはリポジトリをスキャンし、出力を分析し、次の攻撃ステップを自律的に実行します。
Microsoftが確認した懸念すべき事例では、あるAIエージェントがGitHubでのシークレット検索から、わずか5分以内にAzure Key Vaultからのデータ抽出へと移行しました。これは、これらの自動化された攻撃がいかに超高速で動作するかを物語っています。
サービスアイデンティティによる攻撃範囲の拡大
事態はキーの窃取にとどまりません。Microsoftは、Microsoft Entra IDのテナントにアクセスするために、アプリケーション認証情報(Application Credentials)が悪用されていることを検知しました。攻撃者はこれらのアイデンティティを使用して、以下のような破壊的な活動を行っています。
- クラウドリソースの探索: Azureにおけるリソースグループ、権限、およびサービス設定の検索。
- データの抽出: ストレージアカウントおよびAzure Key Vaultサービスへのアクセス。
- 機密データへのアクセス: SharePoint、OneDrive、および電子メールの内容への侵入。
- AIサービスの悪用: Azure AIサービスに割り当てられたワークロード(Workloads)の標的化。
なぜこのニュースが重要なのか?
この進展は、人間主導の攻撃からマシン主導の攻撃への移行を意味しています。実際に変化しているのは「攻撃の速度」です。防御側は、脆弱性を探そうとするプログラマーと対峙しているのではなく、さまざまな方法を試行(Adaptive Behavior)し、失敗した場合にはAPIリクエストを自動的に修正できるAIエージェントと対峙しているのです。これにより、セキュリティチームがインシデントに対応できる時間的猶予が減少しています。
組織はどのように身を守ることができるか?
Microsoftは、これらの脅威の速度に見合った防御戦略を講じることを推奨しており、主なものは以下の通りです。
- マネージドアイデンティティ(Managed Identities)への移行: コード内に長期的なキーを保存する代わりにマネージドアイデンティティを使用することで、漏洩の可能性を排除します。
- プッシュ保護(Push Protection)の有効化: GitHub Advanced Securityなどのツールを使用して、リポジトリへのシークレットのアップロード自体を未然に防ぎます。
- 最小権限の原則(Least Privilege)の適用: サービスプリンシパル(Service Principals)の能力を制限し、実際に必要とされるものにのみアクセスできるようにします。
- 即時のキーローテーション: 漏洩が発見された場合は、そのキーは侵害されたものとみなし、直ちにローテーションする必要があります。リポジトリからコードを削除しただけでは、漏洩したキーを無効化するには不十分です。