米国のロボット開発大手ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)社内で抗議の波が起きており、300人以上の従業員が、同社の四足歩行ロボット犬を米移民・税関捜査局(ICE)へ売却する契約の停止を経営陣に求める嘆願書に署名した。この動きは、物議を醸す治安維持活動において先端技術を使用することへの倫理的懸念が高まる中で生じている。
契約の詳細と「ケルベロス」ロボット
国土安全保障省がラデコ(Radeco)という仲介企業に付与した、130万ドル相当の契約には、有名な四足歩行ロボット「スポット」(Spot)の改良版をICEに提供することが含まれている。この改良版は「ケルベロス」(Cerberus)と名付けられており、危険な環境における監視や検査の任務のために特別に設計されている。
「ケルベロス」ロボットは、以下を含む高度な技術的性能を備えている。
- 放射線、有毒ガス漏れ、爆発物の脅威を検知するセンサー。
- 最大30倍のズーム機能と360度のサラウンド視野を備えた高度なカメラ。
- 赤外線サーモグラフィーシステム。
- ロボットがドアを開けたり物体を扱ったりすることを可能にするオプションのロボットアーム。
- 最小限の人的介入で複雑な産業環境を自律航行する能力。
なぜこのニュースは技術界に懸念を引き起こしているのか?
この展開の重要性は、ロボット工学と人工知能の倫理に関する繊細な側面に触れている点にある。会社側は、国境のトンネル検査や密輸対策を通じて「人間を危険から遠ざける」ことがロボットの目的であると主張している一方、抗議する従業員らは、こうした道具が民間人を標的とした強制送還や家宅捜索に使用される可能性があると考えている。
緊張を高めているのは歴史的文脈であり、ICEの捜査部門は過去に、ボストン・ダイナミクスの現在の親会社であるジョージア州のヒュンダイ(Hyundai)グループの施設に対する家宅捜査を含め、職場への家宅捜査に関与していた。従業員らは嘆願書の中で、自分たちの仕事が同僚に対して、あるいは民間人を恐怖に陥れる作戦に使用されるかもしれないという恐怖感を表明した。
経営陣の姿勢と倫理的保証
ボストン・ダイナミクスの経営陣はこの取引を堅持し、この決定は「倫理的に人類に奉仕する知的機械を開発する」という会社の目的に沿ったものであると強調した。経営陣は、販売条件においてロボットを兵器として使用したり、人間や動物を傷つけたり威嚇したりすることを明示的に禁止していると強調した。
会社の広報担当者は、ロボットが誤用された場合には、保証の無効化、ソフトウェア更新の停止、ライセンスの終了、そしておそらく将来のその顧客への販売見合わせなど、即座に対策を講じると表明した。しかし、治安当局に引き渡された後、会社がロボットの使用状況を実際にどの程度監視できるかという疑問は残ったままである。
人材獲得への将来的な影響
従業員らは、物議を醸す治安機関との契約に関与することが、ボストン・ダイナミクスを世界の技術系人材にとって魅力のない雇用主にする可能性があると警告した。2033年までに1,200以上の新規雇用を創出し拡大するという会社の計画がある中で、抗議者らは、これらの決定が既存の優秀な人材の流失を招き、職業上の優先事項の最前線に倫理的配慮を置く新しいエンジニアを引き付けることを困難にするのではないかと懸念している。