整形外科技術を専門とするEnovisは、フランスのeCential Roboticsを前払い1億5,500万ユーロ、約1億8,000万ドルで買収すると発表した。この取引は、手術用ロボットを同社の戦略の主要な柱にすることを目指すものだ。Enovisは2028年末に膝手術用ロボットの提供を開始し、その後2029年中に肩手術用ロボットを投入する計画だ。
Enovisは現在、主に2つの事業分野で展開している。外科的な骨・関節修復用機器と、リハビリテーション、疼痛管理、理学療法向け製品だ。今回の買収は、Johnson & JohnsonやStrykerなどの競合企業が整形外科手術向けロボットで存在感を高める中で行われ、Enovisにとってこの分野が明確な競争上の空白となっていたことを浮き彫りにしている。
提携から技術の保有へ
EnovisはすでにeCentialと協力していたが、今回の取引により、外部との提携に依存するのではなく、ロボット技術を社内に取り込むことになる。最高経営責任者(CEO)のDamien McDonald氏は、こうした能力を社内で保有することで、次世代技術の開発に対する医師の反応に、より迅速かつ柔軟に対応できるようになると述べた。
eCentialは、Johnson & Johnson向けに開発したVelys Spineシステムなど、ロボットシステムの開発に関する専門知識を有している。BTIGは、この経験により、将来の製品に対する市場の受容リスクが低下する可能性があるとみているが、新しい機器の成功や規制・臨床面での承認が保証されるわけではない。
製品ロードマップと技術的差別化
今回の取引により、Enovisは、現在拡張現実(AR)用ゴーグルと手術計画ソフトウェアを含むAstraプラットフォームに、ロボット機能を追加できるようになる。同社は膝手術用ロボットの仕様をすべて明らかにしていないが、この装置には競合システムとの差別化につながる特徴や細かな相違点が盛り込まれると説明している。
肩手術については、Enovisの経営陣は差別化の余地がより大きいと考えている。現在の選択肢には、Smith & NephewのCori、StrykerのMako、Zimmer BiometのRosaが含まれる。McDonald氏は、この分野の現行ロボット設計は依然として最適とはいえないと述べ、同社がeCentialと開発するシステムでは、7自由度のロボットアームが差別化要素の一つになると指摘した。
実際に何が変わるのか
今回の取引は、Enovisが保有するソフトウェアプラットフォームおよび支援技術と、eCentialが持つロボット関連のエンジニアリング、ソフトウェア、ハードウェアの専門知識を組み合わせるものだ。フランス企業であるeCentialはフランス国内で約50人を雇用しており、エンジニアリング、ソフトウェア、ハードウェアの開発に加え、品質、規制対応、製造の小規模チームも擁している。Enovisによると、製造・組立チームは年間75~100台のロボットを生産できる。
病院や外科医にとって、今回の発表は近い将来に新しい機器が利用可能になることを意味しない。目標とする膝手術用ロボットの投入は2028年末まで先であり、肩用システムは2029年に予定されている。また、情報源では、価格、最初に投入される市場、発売前に必要となる規制上の段階についての詳細は示されていない。
取引費用と残された問題
前払い金に加え、Enovisは膝・肩手術用ロボットの開発段階に連動して、最大3,500万ユーロを追加で支払うことを約束した。同社は、この取引によって2027年の利益率が圧迫されると見込んでおり、BTIGのアナリストはこれを批判した。ただし、同アナリストらは、同社の現在の評価には、この分野で達成した進展が完全には反映されていないとも述べている。
情報源の報道によると、Enovisの株価は火曜日に16.5%下落し、20.53ドルで取引を終えた。これは、投資家が社内で手術用ロボット事業を構築する機会と、投資コストおよび製品が市場に投入されるまでの長い期間を比較衡量していることを示している。特に肩手術において、EnovisがeCentialの専門知識を承認取得済みで拡張可能な機器へと転換できるかどうかが、この取引の影響を評価するうえで決定的な要因となる。