Googleは、医薬品開発の加速、ゲノム解析、脳のマッピング、がん診断の改善、疾病流行の予測に用いる複数のAIモデルと研究ツールを紹介している。同社は研究成果や提携を示しているが、ほとんどの応用は研究または臨床支援の範囲にとどまり、専門家を完全に代替するものではない。
Googleは、分子レベルでの疾患メカニズムの解析から、診断支援、公衆衛生計画に至るまで、医学研究の複数の段階でAIを活用している。同社によると、同社のチームは過去5年間に、疾患の理解と治療に関する査読済み論文を90本発表し、90,000件を超える引用を獲得した。
Yossi Matias(Google副社長兼Google Researchゼネラルマネージャー)と、Pushmeet Kohli(Google DeepMind科学担当副社長兼Google Cloudチーフサイエンティスト)が執筆したこの記事は、単一の医療製品を発表するものではなく、研究ツールと研究提携の成果をまとめたものである。
ゲノムから脳のマップまで
GoogleはAlphaGenome Atlasを、ゲノム上の一塩基変異が分子生物学に及ぼす影響を予測するための索引として紹介している。University of Exeterの研究者らはこのプラットフォームを用いて、54,000人を超えるデータを解析し、老化と関連するPLA2G7や、細胞内の酸素センサーであるEGLN1など、タンパク質の濃度に関連する変異を特定した。
医薬品開発の分野では、バルセロナのInstitute for Global Healthの研究者らが、シャーガス病に対する抗寄生虫活性を探すため、AlphaFoldモデルを用いて30,000種類の化合物を仮想スクリーニングした。この取り組みにより、約800万人が罹患し、治療しなければ重篤な合併症を引き起こす可能性がある同疾患に対して再利用できる、FDA承認薬2種類の特定に貢献した。
またGoogleは、HarvardのLichtman Labと協力し、人間の脳の一部をナノスケールの精度で再構築し、Neuroglancerを通じてデータを公開した。これに加え、ハエ、ゼブラフィッシュの幼生、鳴禽類の脳のマップも提供している。
研究と応用の距離を縮める
Stanford University School of Medicineと協力した臨床試験では、DeepVariantとDeepConsensusの2つのモデルにより、時間的に切迫した症例で、全ゲノムシーケンスを用いた遺伝子診断に8時間未満で到達することを支援した。Googleは、この成果がGuinness World Recordからも認定されたとしている。
同社はまた、第一原理から新しい酵素を設計する機械学習の手法であるAlphaProtein Novoを紹介している。実験室での試験では、このシステムは医薬品の主要な構成要素を合成する酵素や、過酷な条件下で有害な環境プラスチックを分解する酵素を設計した。
診断と公衆衛生の支援
Imperial College LondonおよびNational Health Serviceと協力してNature Cancerに発表された2件の研究では、125,000人の女性を対象に乳房X線画像診断システムを検証した。このシステムは、従来見逃されていた間隔がんの25%を検出し、専門医による画像読影の負担を最大40%削減できる可能性を示した。これらは研究上の成果であり、同システムが放射線科医の代替として承認されたことを意味するものではない。
小児白血病の症例では、DeepSomaticが既知の変異を確認し、Children’s Mercy Hospitalで以前にシーケンスされた実際の症例に適用したところ、これまで検出されていなかった10個の変異を発見した。Googleはまた、環境、気象、移動に関するデータと地理モデルを組み合わせ、疾病流行の予測を支援している。WHO AFROとコンゴ民主共和国のINRBによる研究では、対話型の地理モデルが、エボラへの曝露とその伝播のリスクをより迅速に特定するのに役立った。
なぜこの動向が重要なのか
ここで実際に起きている変化は、診療現場で単に言語モデルを使うことではなく、AIの役割を医薬品開発、遺伝的変異の解釈、診断画像の処理、公衆衛生資源の配分にまで拡大することである。ただし、この記事はGoogleの視点から成果を示したものであり、規制上の承認の詳細や、各モデルを異なる人口集団や医療制度に一般化できるかどうかについては説明していない。
Google.orgによると、同団体は2026年に、疾患研究で先進モデルを利用する組織に6,000万ドル超を提供しており、その中にはMakerere UniversityとUniversity of Pennsylvaniaが含まれる。これらの取り組みの価値は、研究成果を信頼できる臨床ツールへと変換できるかどうかにかかっており、独立した検証と医療的監督を維持する必要がある。