インドの音声ストーリープラットフォームPocket FMは、コンテンツ制作におけるAIの利用を拡大するなか、年換算売上高を1年間で約5億ドルに倍増させた。共同創業者兼CEOのRohan Nayak氏は、現在、AIが同プラットフォームのライブラリの93%を支援しており、新規コンテンツの99%の制作に使われていると述べた。
同社はこの数字を、直近1か月の売上高を12倍して算出しており、契約済みの経常収益を意味するものではない。年換算売上高は1年前には約2億5,000万ドルだったが、4月には4億3,000万ドルに上昇し、その後、現在の水準に達した。
より迅速で低コストな制作
同社幹部の説明によると、Pocket FMはストーリーを完全に独立して生成しているわけではない。人間のクリエイターが引き続きアイデアとストーリーテリングを担い、AIツールがそれらの構想を大規模に最終コンテンツへ変換している。Nayak氏は、数十年にわたって存続できる作品やキャラクターを構築するには、創作プロセスにおける人間の役割が必要だと述べた。
同社は、クリエイティブライティングやテキスト音声変換などの作業向けに独自モデルを開発した。開発では、長年にわたる制作データと、リスナーがストーリーにどう反応したかを示すインタラクションデータを活用しているという。同社のAI責任者であるVasu Sharma氏によると、Pocket FMはこの転換によってコンテンツ制作を約80分の1のコストにした。100時間分のコンテンツ制作に必要な期間は、約1年から1日に短縮された。
この変化はライブラリの規模にも反映されている。同プラットフォームのクリエイターは55万人を超え、年間約250万時間分のAI支援コンテンツを制作している。同社のライブラリ全体は2年前には約10万時間分だったが、現在では音声シリーズが77万本を超えている。
成長と音声以外への拡大
同社はコンテンツ量の増加を、リスナー維持率の改善と結び付けている。12か月後の収益維持率は76%に上昇し、2年前の44%から改善した。同社によると、より多様なストーリーを提供することで、より幅広い視聴者の嗜好に対応できるようになった。また、英国、ドイツ、フランスへ事業を拡大し、米国ではユーザー生成コンテンツを開始した。
Pocket FMのリスナーは20か国以上で2億5,000万人を超えており、米国は同社の年換算売上高の約70%を占める。米国市場は昨年、約70%成長した。売上高の約8,500万ドルは広告によるもので、約4億1,500万ドルはユーザーが個別エピソードのロック解除に支払った金額による。また、96シリーズがそれぞれ100万ドルを超える売上高を達成し、そのうち13シリーズは1,000万ドルを超えた。
親会社のPocket Entertainmentは、このモデルを他の形式にも展開しようとしている。現在は米国のみで提供されている短編ドラマアプリPocket Sagaは、開始から3か月で約1,500万ドルの年換算売上高を達成した。同アプリのコンテンツは完全にAIで制作されている。また同社は、Pocket FMで成功したストーリーを利用し、従来の実写撮影に依存する制作なしで、同アプリ向けの動画を作成している。
なぜこのニュースが重要なのか
Pocket FMの数字は、AIを単なる文章や音声の実験的なツールではなく、コンテンツ経済を拡大するために実用的に利用するモデルを示している。今回の事例で決定的な要素は、インタラクションデータ、制作コストの削減、そしてアイデアの発展段階に人間を残すことの組み合わせだ。ただし、示された財務・運営上の数字の大半は同社の説明に基づくものであり、同社は黒字で、調整後ベースでプラスのキャッシュフローを達成していると述べているものの、純利益、キャッシュフロー、利益率は明らかにしていない。
Pocket Entertainmentは新たな資金調達に向けて投資家と協議している。評価額約20億ドルで1億〜1億2,000万ドルのラウンドになるとの報道があるが、ラウンドの金額や評価額は確認されていない。Nayak氏は、同社が今後24か月以内に株式を公開する計画はないと述べた一方、将来的にはインドまたは米国での上場の選択肢を残している。