オーストラリア企業のApate.aiは、詐欺の被害に遭う可能性がある人物を装う数千のAIエージェントを使い、電話、メッセージ、メール、フィッシングリンク、ソーシャルメディアグループを通じて詐欺師とやり取りしている。目的は詐欺師の時間を浪費させることだけではなく、銀行、通信会社、政府機関、公共事業者が詐欺対策システムの改善に利用できる運用情報を収集することだ。
Apateによると、そのエージェント群はこれまでに250万件の会話を行い、詐欺師の時間に換算すると17年分を浪費させたことになる。こうしたやり取りの中で、エージェントは銀行口座番号、暗号資産ウォレット、電話番号、悪意のあるウェブサイト、詐欺師がなりすますブランドに加え、詐欺師が運用するキャンペーンの詳細を明らかにしようとする。
時間の浪費から証拠の収集へ
エージェントは、年齢、性別、訛り、言語が異なる人物になりすますことができるため、詐欺師をより長く会話に引き留められる。また顧客は、銀行口座番号や暗号資産ウォレットのアドレスを入手するなど、特定の業務をエージェントに依頼できる。同社は顧客向けに、顧客の利用者、従業員、ブランド、製品を標的とする詐欺に関する情報を表示する分析ポータルも提供している。
Apateは、先進的なモデルと社内で調整したモデルを利用している。また、エージェントが詐欺師と行った会話に加え、創業者兼最高経営責任者(CEO)のDali KaafarがMacquarie Universityで実施した研究を使ってモデルを訓練している。
実際に何が変わるのか
このアプローチは、被害発生後の対応から、被害が発生する前の兆候の収集へ移行することに重点を置いている。同社の共同創業者兼最高商務責任者(CCO)であるBrad Joffeによると、通信会社が電話番号をブロックしても、詐欺師が新しい番号を使うことは防げない。また、銀行取引の監視では、詐欺師が顧客に接触した後になる可能性がある。そのためApateは、詐欺師との会話から直接情報を取得しようとしている。
顧客にはCommonwealth Bank of AustraliaとTPG Telecomのほか、公共事業者、通信会社、その他の政府機関が含まれる。同社によると、TPGは約59万件の電話を同社のエージェントに転送し、Commonwealthでは公表された詐欺損失が76%減少した。一方、名前が明らかにされていないオーストラリアの銀行は、外部のエージェントを使って22件の詐欺キャンペーンを妨害した。
資金調達と国際展開
Apateは、シドニーのMacquarie Universityで実施された研究を基に、2024年に設立された。同社のアイデアは、Kaafarが詐欺師を44分間電話につなぎ留めた詐欺電話をきっかけに生まれ、その後、通話内容を抽出し、詐欺の検知と防止を改善する機械学習および自然言語処理の研究へと発展した。
同社は8月、Lobby Capital、OIF Ventures、Investible、Concept Ventures、Baobab Venturesからなるシードラウンドで815万ドルを調達した。Joffeによると、総調達額は1,000万ドル近くに達しており、従業員20人の同社は、今回の資金を製品開発と国際展開に充てる予定だ。これにはロンドンオフィスの開設と、米国での存在感の強化が含まれる。
このサービスは、米連邦捜査局(FBI)が2025年にAIを利用した犯罪に関連する2万2,000件を超える苦情を受け、損失が約8億9,300万ドルに達したと情報源が指摘する中で提供されている。このうち6億3,200万ドル超は投資詐欺に関連していた。損失削減とキャンペーン妨害について公表された成果は同社によるものであり、情報源は、測定方法や詐欺師との自動的なやり取りに伴う法的・運用上のリスクへの対処方法について、独立した詳細を示していない。