Cloudflareは、市民社会組織向けプログラムの第1期に参加する30の非営利団体を選出し、参加団体に対して、同社の開発サービスに利用できる総額750万ドル相当のクレジットを提供した。同社によると、これらの取り組みは、人権、人道支援、メンタルヘルス、教育、市民参加の分野で、AIと自動化に基づくツールを団体が構築できるよう支援することを目的としている。
このプログラムは、Cloudflare for Startupsを非営利団体および公益団体にも拡大する取り組みの一環で、各団体に最大25万ドルのクレジットを提供する。またCloudflareは、プログラム第2期の応募受付開始も発表した。
ウェブサイトの保護からツールの構築へ
この取り組みは、市民社会組織に無料のサイバーセキュリティサービスを提供するProject Galileoと関連しており、120か国以上にある3,400以上のドメインを保護している。Cloudflareによると、これらの団体のニーズは、既存のアプリケーションを保護することから、それぞれの業務フローに合わせた新しいアプリケーションを構築することへと発展した。
ツールは、Workers AI、AI Gateway、軽量なサーバーレス基盤など、Cloudflareの開発サービスを利用している。同社によると、これらのサービスにより、需要に応じて拡張しながらアプリケーションを実行し、専用のGPU基盤の必要性を減らし、リクエストレートの制限を設け、AIモデルの利用状況を監視・ルーティングして不要な呼び出しを抑制できる。
しかし、出典は、市民社会セクターにおけるAI導入には依然として障壁があると説明している。CIVICUSの調査では、回答者の半数以上がプライバシーへの懸念を利用の障壁と考え、48%が財政的制約によって導入が制限されていると答えた。これらの団体は、活動家の所在地や匿名情報源の身元など、極めて機微なデータを扱っているため、漏えいや不正アクセスは運用コストを超える問題となる。
団体が開発したツールの例
ペンシルベニア州レバノン郡にある独立系の非営利ニュースルーム、LebTownは、提案段階から公開まで記事を追跡し、リーチと地域活動への影響を監視する編集管理システムを開発した。また、不動産移転記録をPDFファイルから構造化データに変換するツールや、WordPressと統合する校正エージェントも構築した。
インドでは、Kaya Guidesが、うつ病を抱える人々と訓練を受けたカウンセラーをつなぐWhatsAppベースのメンタルヘルスアプリケーションを開発した。2026年9月までに、このアプリケーションは10,439人を支援し、そのうち2,325人が現在登録しているユーザーで、月間約50万件のメッセージを処理している。また同団体は、カウンセリング通話を聞き取り、カウンセラーにリアルタイムのフィードバックを提供するシステムも開発した。
一方、英国の非営利団体であるThe Snorkelling Societyは、Cloudflareを利用してSnorkelMapアプリケーションを保護している。このアプリケーションにより、世界中のシュノーケリング愛好家のコミュニティは、スポットを発見し、体験や写真を追加できる。
重要な業務における自動化
CloudflareはFreedom Houseとも協力し、公開レポートを収集・整理し、国境を越えた弾圧の可能性がある事例を特定するダッシュボードを構築した。ツールは同団体の手法に合わせて調整され、開発の全段階でFreedom Houseが関与した。またGlobal Network Initiativeとは、表現の自由とプライバシーに関する規制案や法的進展を監視し、アドボカシーの機会と期限を追跡するダッシュボードに取り組んでいる。
Article Oneとの提携には、工場監査や各国の状況に関する報告書などの文書を処理し、人権リスクを評価するツールも含まれる。Cloudflareは、AIが情報の整理や草案の提案を支援する一方、最終的な判断はArticle Oneの職員が行うと強調している。
実際に重要なことは何か
この取り組みは、技術人材や開発資源が不足しがちでありながら、ずさんな処理が許されないデータを扱う団体におけるAI利用のモデルを示している。ここでの本質的な価値は、単にクラウドクレジットを提供することではなく、資金、開発サービス、エンジニアリング支援、安全性とプライバシーの管理策を組み合わせることにある。
それでも、これらの例は自動化によって人によるレビューが不要になることを証明するものではない。むしろ、モデルに適した作業を特定し、データを最小化し、漏えいやハルシネーションを防ぎ、権利に関わる結果を伴う意思決定には人間を関与させ続ける必要性を明確に示している。したがって、この取り組みは非営利団体の問題に対する一般的な解決策というより、高い機微性を持つ環境向けのAIツール構築における実践的な試みとして重要だといえる。